Title: モノ語り/第三十八回「Chester Jacket」其の一

子供のときからずーっと思ってきたことがあります。

「スーツってなんだ?」です。

僕は最近までスーツに対して何の魅力も感じた事はありませんでした。
同じようにそう思われている方も少なくはないと思います。

自らをアピールするに常に魅力的なカジュアルウェアがある今、
スタイル(個性)を出したい若者たちにとって、
一見、無味無臭なスーツは単なる制服のようにしか感じず
興味の対象外です。

だから僕も何が良くて
どこがカッコいいのか?
全くポイントがつかめてなかったわけですが、
それは仕方がありません。

僕らの時代はスーツといえば「どこそこの」
というDCブランド世代です。
ブランドが「これはナウですから大丈夫です」という
安心をスーツとともに売っていたような時代です。
長い歴史を持つスーツ道には「いまさら聞けないオーラ」も漂います。
それらが相まって、何が良くてどこがカッコいいのかは
聞くこともなければ言われることもないのです。
だからスーツをセレクトするからには
「それは後ろ指さされるかもよ」という不安が
常につきまとっていたことも無きにしもあらずでした。


カジュアルウェアの世界ではそれはありません。
別にいいわけです。
どんな着崩れていようがそれはひとつのスタイル(個性)であって、
自分のなかのトレンドとしてあるわけですから不安は一切ありません。
「これが私のやり方です」です。

ただ、
固く伝統に守られてきた王道のファッションである
スーツはそうはいきません。
許されません。
セオリーを知った人たちからダメ出しを食らいます。

しかし次世代を担うヤングに対し、
何が良いか、どこがクールかを伝えてあげることができなければ、
世界最高峰の生地を使った名だたる最高級ブランド品であっても、
カジュアルを苦手とするスーツ一辺倒のおっさんが
どれだけのウンチクたれたところで若者からの支持は得ることをできず、
結局ジェネレーションによる決別です。

そんなことですから僕自身、未だにどこが良いかを聞けていませんし
なにをクールとしているかのポイントがさっぱり分かりません。
しかし、
必ずや必要に迫られて着なければならない時がやって来ます。
そんなときには普段のスタイル通りにアピールするわけにはいきません。
さすがのヤングも怖じ気づき、結局無難なリクルートスーツで決めてみるものの
その他大勢に馴染んでしまい、日頃からアピールをしてこれたことを思えば
納得が行かないでしょう。

けれどその悔しさは初めて興味の対象に近づくきっかけです。

そして「次はキメてみせる」です。

次回こそはのリベンジです。

其の二につづく。

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